レディ・ジョーカー

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長編小説を映画化するとなると、ある程度シナリオを削る必要があります。読むだけでも標準的な長編小説(文庫で400P程度)で3〜4時間はかかるものを映像などをつけて約2時間に縮めなくてはいけないわけで、単純に考えれば削る量は半分近くまたはそれ以上となるという計算になります。勿論、エピソード削るだけではなくて、登場人物を減らして物語をシェイプアップしたり、ストーリーの視点を変えることで同じ事象にたいする描写を減らしたり、色々な手法があると思うので、見ている方としては単純にボリュームが減ったとは思わない可能性もあります。そこは、脚本・監督の腕の見せ所となるわけです。

今回のレディ・ジョーカー、小説版は新書のハードカバーで上下刊構成。中身は2段書きになっていて、心持フォントも小さいように見えます。本屋でパラ見したときはたまたま後ろの方を開いたので解説かあとがきのページかと思ったくらいです。多分、ウチにある貴志祐介の青の炎とかの3〜4倍くらいの量があると思います。それを同じ尺の映画にするわけだから、やっぱり無理が出てくるわけです。

警察組織の矛盾はなんか唐突感があって、ちょっとむりやりっぽい。企業内は落ち着きすぎてて裏がある様にしか見えないし、あの人が自殺しちゃうのも、なんかいまいち腑に落ちない。レディ・ジョーカー・チームに至っては動機がさわりしか見えないのでよっぽど気合入れて行間読んでいかないと、リスクしょってあそこまでやる理由が見えないです。

選んでいる題材とか、テーマとかは非常に面白いです。社会派サスペンス。ストーリーの展開を平坦ですが、そのわりに何故か飽きないです。でも、全体にパンチが足りないというか、「表現したいことを全部詰め込んだらなんか中途半端なものになってしまった新人の習作」みたいな感じになってしまったような気がします。尺の時点で小説と同じことはできないのでいっそのこと警察がレディ・ジョーカーどっちかだけの視点に絞って知恵比べを楽しむ映画とかにしてもよかったのではないかと思います。


俳優の演技もみなカッコよかったし、面白かったのだけど、なんか惜しい。