県庁の星

県庁の星

県庁の星

エリートの県庁職員である主人公「県庁さん」が県の人事交流の一環とかで大型スーパーへ出向し、そこで奮闘するお話。

準主役に県庁さんの教育係のベテランのパートのおばちゃんを置いて、視点が二人の間を行き来する。ちょっと考えないと読みにくいのだけど、その分具体的な表現を(多分あえて)省いている県庁さんやおばちゃん、その他スーパーの人間、スーパーそのものの雰囲気の変化の機微が二人の心情から感じ取れる。

設定を見れば、当然「役人根性の主人公が民間に出て人間的に成長して、数字でわからないことや前例にないことに挑むことを知る」というストーリーであり、まさにそのまま進んでいくんだけど、上で僕の書いた筆者の書き方から、その変化、成長がいつの間にか自然に、かつ必然に進んでいくので劇的な盛り上がりはなくても面白く読んでいけます。

変化、成長の象徴として中盤からずっと描かれているイベントが終盤見事に結実するのは、ものすごく気持ちよく、主人公は30歳なのに、青春ドラマ(部活モノとか)を読んでいるかのような爽やかさでした。

なかなか軽く読むには良い、良質なエンターテイメント作品だった気がします。ただ、主人公の性格(役人属性)が僕に少し似ているんだよなぁ。